談論私流

 

 ひどい頭痛だ。
 動悸も激しい。
 どうやらクスリが切れてきたようだ。禁断症状が私を容赦なく責め苛む。私は胸をかきむしりながら机にたどり着き、ワープロの電源を入れる。震える指でキーボードをたたく。

「ガイコツ族は絶滅寸前だった。世界でたった一人残ったガイコツは……」
 快感が体の芯を貫く。無限の力を得たような気分だ。怖いものなど何もない。禁断症状から抜け出た私は落ち着きを取り戻し、鼻歌混じりにコーヒーを一口、口に含んだ。

――そう、私は創作中毒患者なのである。

 このクスリに手を染めたのはいつ頃だったろう。初めは軽い気持ちで手を出した。やめられると思っていたのだ。

 誰もが多感な思春期時代。私も例にもれず、厭世的な青春を送っていた。そんな私に「……すごく楽しくなるよ。一度試してごらん……ほら……」と悪魔が耳元で囁いたのだ。少女だった私は「NO」という勇気はなく、興味本位も手伝って、あっけなく魔の手に落ちてしまった。

 自然とこぼれ出る言葉たちをノートに書き付けた。散文のようなものができた。目が眩むようなエクスタシーを感じた。俗に言う「フラッシュ」という現象であろう。
 その快楽に溺れているうちに、いつしか言葉を削り現代詩を書いていた。ふと気が付くと、肉が付き、童話ができていた。そして、知らない間に小説を産み出していたのであった。あっという間に重度の創作中毒患者の出来上がりである。

 心身に及ぼす影響を考えるとやめるべきなのかもしれない。だが、もう手遅れなのだ。私はやめる術を知らないのだから。(了)

danron_sinbun