枝毛の罠

 長髪の人なら、だれでも一度は気にしたことがあるであろう「枝毛」。
 枝毛は気になる。気にしてはならないときほど気になる。テストのときにばかり、部屋のちらかりが気になるようなもので、忙しいほど、枝毛が気になる。

 ここのところ、いまだかつてないほど枝毛が増えてしまい、思い切ってショートにしてしまおうかと何度も思った。しかし、いつもばっさりやった後、悔いる。1週間ほどは満足しているのだが、やっぱり長いほうが良かったなあと思えてくるのだ。
 ロング → ショート → 徐々に伸びロング → ショート → また徐々に伸びロングを繰り返してきた。しかしもう、後悔することは目に見えているので、ばっさりいくことはないだろう。最後にショートカットにしたのは、15年ほど前。それからずっとロングである。

 先日、枝毛が気になって気になって。
 枝毛だけに木になる。お。うまいこと言った。

 ちょこちょこ切っていたら、いつしかトランス状態に。枝毛撲滅、枝毛撲滅……と、念じるように枝毛きり。忙しいのよ、それどころじゃないのよ! でも気になって仕方がない。
 バシバシ切ったので、気付くと、部分的にセミロングくらいになっていた。こりゃいかんと、鏡の前でちょきちょき。全体をセミロングにそろえた。結局、何時間も枝毛に費やしてしまった。ああ。

枝下の罠

 忙しいとき、枝毛を切るか、やるべきことをやるか。枝毛だけに、道が枝分かれしているのかもしれない。
 お。うまいこと言った。(了)