生まれたときから結構な年齢になるまで、ずっと犬と暮らしていた。そのせいか、かなりの犬好きで、よその飼い犬はもちろんのこと、野良犬にさえもちょっかいを出すという怖いものしらずのガキだった。
大人になってからも、猫好き・猫オタの気持ちが分からなかった。犬の方がずっと可愛いのに……と。 しかし、うちに猫がきてから、それは変わった。猫は一緒に暮らしてみないかぎり、その愛おしさは理解できないと断言してもいい。猫の可愛さというのは……と語るとうざいので語らないが、またそのうち語ってしまうことであろう。
「花の好きな人に悪人はいない」 「山を愛する人に悪人はいない」 「犬が好きな人に悪人はいない」 等々、人は「“自分の好きなもの”を好きな人に悪いヤツはいない」などと時折口にする。 私も先日、会話の流れで「猫好きに悪人はいない」と言ってしまった。その場に居合わせたT氏も猫好きであったが「いや、猫好きは悪人ばかりだ」と答えた。 ……なんじゃと? 猫タンが好きなのに、悪いヤツのわけがないだろうっ?
そのあとのT氏の放ったセリフに、私は舌を巻くことになる。 「マフィアのボスは、猫を抱いている」 こう言い放ったのだ。 「!!!!」
そうだ、そのとおりだ。 いや、本当に抱いているわけではないが、そんなイメージがある。その着眼点に感心した。
マフィアのボスは猫好き。 よって猫好きは皆悪人。 この理屈には反論できそうもなく、私の中では今でも「猫好きは悪いヤツばかり」という方程式が居座っている。(了)
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