道で出会ったポケモン

 近所を歩いていたとき、不思議な事件が起こった。
 4~5歳の男児が泣きじゃくっていた。そこまでは珍しい風景ではない。しかし、号泣男児は私に何か手渡そうとしてくるのだ。私は心配になって、「どうしたの?」としゃがみこんだ。と同時に、近くにいた母親であろう女性が「いただいたのはその人じゃないのよ」と言った。
 私の頭の中は「???」になる。 彼が手渡そうとしていたのは、折り紙で作られたピカチュウだった。母親とおぼしき女性は「すいませんが、それ、もらっていただけないでしょうか」と言った。
 話を聞くと、知らない人から折り紙ピカチュウをもらったらしいのだが、どうも欲しくなかったらしく、それで泣きじゃくっているということだった。

pikatyu
(これが問題の現物だ)

 じゃあ、捨てればいいじゃん……。
 母よ、なぜ引き取らないのか?
「はいはい」ってな感じで、カバンに入れればいいのでは?
 そんなことが頭にうずまきながら「あはは、そうなんですか」とピカチュウを受け取った私。 そして、幼児の号泣はすすり泣きに変わった。良かったね、男児。欲しくもないピカチュウを手放すことができて。

 それにしても彼はなぜ、そこまでピカチュウが嫌いだったのだろう。これを手にしたら人生終わり、ってくらい泣いていたが。 人気者ピカチュウがここまで嫌われたのは初めてのことではないのだろうか。 幼児も含め、人は怖いときに泣くものだと思うが、嫌いなときに泣くとは思いにくいのだ。

 もしピカチュウを怖がっていたのだとしたら、彼は敵対するポケモンだったのかもしれない。ええと、全然ポケモン知らないので名前が挙げられないのだけど、なんか敵対するヤツ。

 もう一度彼に会うことができたなら聞いてみたい。
「なぜ泣くほど嫌いなのか」
「キミの正体はポケモンなのではないか」
 と。そんなことしたらまた泣きじゃくられてしまうかしら。(了)

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