紅葉に染まる井の頭公園を散歩した。寒くなる毎に空気は澄み、透明な空気に紅が映えて美しかった。 ところで、紅葉に限らず曼珠沙華や赤トンボなど、自然の深い茜色をみる度に思い出す一文がある。 ――真っ赤な嘘というけれど。嘘に色があるならば、薔薇色の嘘をつきたいと思う。そう心がけている。―― 小学校で使うような水彩絵具の無邪気な赤色だろうか。 私は思う。
ちなみに「あっかんべー」の「あっかん」は赤い目という意味だ。「赤い目 べー」なのだ。下瞼を指で引き下げて赤い部分を見せながら、べーをする行為。このとき見せる「赤い目」は皮膚の下を流れる血の色。胸の内であっかんべーをしながら真っ赤な嘘をついたりするわけだ。――やっぱり「真っ赤」は血の色でしょ、そうでしょ?
――そんなことを考えるともなしに考えながら、初冬の空気を胸いっぱい吸い込む。すると何やら、そこはかとなく胸の奥に血が滲むようなやりきれない痛みを感じた紅の公園だった。(了) |