上から目線の歌

 動物に餌を与えるときに使う表現―「餌をあげる」「ご飯をあげる」。「あげる」はもともと謙譲語なので、動物に対して使うのは間違いといえば間違いだ。なぜ「間違いだ!」と言い切ってしまわないかというと、「あげる」はもうすでに謙譲の意味が薄れてしまっているからだ。

 言葉は使われていくうちに変形するし、磨耗する。使い込んだ身の回りの道具がいつの間にか湾曲していたり指のへこみが刻まれていたりするのと同じだ。使い込んだものほど、変形する。そして、それは元には戻らない。

 そこを踏まえると、「あげる」はよく使われる言葉だったのだろう。人になにかを譲渡する機会が多かったのかと考えると、日本人はいい人ばかりなのだろうか。私としては「ご飯をあげる」でも「エサをやる」でもどっちでもいい。

 だが、あまりに上から目線すぎやしないかと思う歌がある。

「はとぽっぽ」(文部省唱歌)
ぽっぽっぽ はと ぽっぽ

まめが ほしいか 
そら やるぞ
みんなで なかよく 
たべにこい

 どうだろう。
「豆が欲しいか?」とサディスト口調で聞き、「そらやるぞ」と豆を放り投げて、「食べに来い」と這いつくばらせる。
 そこまで偉そうにしなくてもいいのではないかと。ハトも内心イラッとしつつ、豆をつついていることだろう。かと言ってこうしてしまうとどうか。

ぽっぽっぽ はと ぽっぽ
まめが ほしいですか
どうぞ さしあげます
みなさんで なかよく
たべにいらしてください

 これもまた不気味である。どうしてここまでハトに媚びなくてはいけないのかと、ヒトとしてのプライドを傷つけられているエサ係の姿が目に浮かぶ。

人間と動物の立場バランスの取れた歌というのはなかなか難しいものなのかもしれない。(了)

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