嘘っぽい思い出


嘘っぽい思い出3

 幼い頃、おかしなものを保管していた。キャンディの包み紙だ。今のキャンディは小袋に入っているのが主流だと思うが、当時は一枚紙をねじって個包装してあるのが普通だった。現代の小袋より、色気も味わいも深かったように思う。

嘘っぽい思い出2

 口にキャンディを放り込んだ後、包装紙のねじり跡を丁寧に指でのばす。しつこいシワを伸ばすときは、押し花を作るときのように本に挟んだりもした。その後、ピンと伸びた包装紙を小箱に入れて保管し、時折ふたを開いては宝石でも愛でるかのように、それをながめていたものだった。

 何か使い道があるわけではない。ビニール製だからメモ用紙にできるわけでもなく、折り紙として遊ぶわけでもない。ただ、置いておく。たまに眺めては、また仕舞う。その時間はとても幸せだったように記憶している。

 いつしかその収集癖はなくなり、使いもしない包み紙は捨ててしまったのだろう。捨てたときのことはまったく覚えていない。大事にしてきたものが、突然どうでもよくなるのは珍しいことではないはずだ。
 
嘘っぽい思い出1
 先日買ったキャンディ。
 紙で個包装されていた。

 蘇る思い出。
 これを宝石のように感じていた時代。
 過ぎた過去。
 甘い思い出はきっと美化されている。
嘘っぽい思い出4

  キャンディをひとつ、口に放り込む。人工的な嘘っぽい甘さが口に広がる。――過去になった思い出とキャンディの思い出は、どこか甘い香りがする。そして甘い香りの思い出は、いつもどこか嘘っぽい――そんなことを考えて過ごす晩秋の午後である。(了)

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