花札に恋して

 作品の資料として、花札のことを調べた。 「花札のことを」というより、短冊の「あのよろし」を調べるのが目的だった。それがまさか恋心に発展するなんて。

 そう、最初は「あのよろし短冊」の形状を調べたかっただけだった。 調べた結果、短冊の形が分かると同時に、他の事も分かった。 「あのよろし」は「あのよろし」と読むのではなく「あかよろし」と読むらしい。意味は、「明らかに優れている」ということなんだって。へぇぇ。

梅

 にしても、なんでここにそれを書くのだろう? 梅に飾った短冊に「明らかに優れている」と書く理由は何? 何が何より明らかに優れている? 私の好奇心はくすぐりまくられた。

 その後、気になりつつも、多忙に押されてそれ以上は調べることはなかった。 が、とある事情でうちにPC花札ゲームがやってきた。 私は「あかよろし」だけでなく、花札の全般を知らなかった。花札の遊び方を知らなかった。 ……のだが、ゲームがきっかけで、夫に「役」のことなどをちょろっと聞き、たちまち興味深々になった。 猪の札と鹿の札と蝶の札が揃えば「猪鹿蝶(いのしかちょう)」という役がつく。
猪鹿蝶
(猪鹿蝶)

 月の札と杯の札で「月見酒」。 桜の札と杯の札で「花見酒」。
  な、なんと洒落た遊びなの! 私のそれまでの「花札」イメージは「博打」とか「ガラの悪い人たちがタバコの煙の中でする遊び」みたいなものだった。それが、こんな風に日本の情緒と遊び心あふれるモノだったとは!! 目からウロコであった。
花見酒(花見酒)

月見酒(月見酒)

 もう、こうなれば止められるわけはない。早速翌日花札を買った。 手に入れて更にとりこになった。
 札は12ヶ月に分かれている。一ヶ月の中に4枚一組で収まっているいう仕組みだ。毎月その時の花鳥風月が取り入れられている。 上述の猪やら桜やら……の札たちも、この視点から見れば、12ヶ月の中のどこかに配されているというわけ。 ねえロマンを感じない?

 その他、感動ポイントはいくつかあった。造りに関しても感動した。おそらく当初は木の札を使っていたのだろうと、紙の札を手にして感じた。

 オマケだが、花札のことをよく知らなくてもなんとなく知っているであろう(私さえなんとなく知っていた)2月の札「梅にウグイス」。 これは身体の色からして(ウグイス色だから)、ウグイスではなくメジロだろう。 でも目が赤い。つまり「梅にメアカ」といったところだ。 このあたりにも、昔ウグイスやブッポウソウが姿と声を取り違えられ、その名がついてしまったという(有名な話ですね)エピソードを感じることができ、かなり嬉しくなる。

梅にメアカ(梅にメアカ)

 そんなわけで、花札に恋してしまった。花札は繊細でワビサビがある。JRだったかのCMコピーにある「ああ、繊細な日本に生まれてよかった」ってところである。 (了)