◆1 「森ガール」という名前との出会い 森ガール――。 もうすっかり国民に浸透している言葉なのかもしれないが、私がこの単語を知ったのは、多分今年に入ってからだと思う。 一昔前に「アムラー」や「シノラー」などというファッションのくくりがあった。「森ガール」と聞いたとき、それと同様の意味合いだと思った。森三中が好きで真似た格好をしている人種=太っている方々のことだろうと。 「最近太ったんじゃない?」 「まあね。でも森ガール目指してるからいいの」 「そっかあ。私もなろうかなあ」 このような会話がどこかでされているものだと考えた。念のため調べてみると、全く違う意味だということが判明。森にいそうな(格好をした)女の子を森ガールと呼ぶと判明。そりゃそうだわ、デブが流行になるわけないわなと判明。
その後、画像を載せているサイトを見て驚かされた。 こっ、これは……。 これは……。 これは……。 私が昔からしているような服装ではないか。
思い起こせば、そうだ。 昔は見つけることが難しかったというのに、去年か一昨年くらいから、その手の服をどこでも見かけるようになっていた。しかし、それを特に意識はしなかった。私が歳を重ねたせいで、そのような錯覚に陥っているのだろうと考えたからだ。
歳をとると若い子がみんな可愛く見えたり、カドが取れて丸くなり、様々なことに対して許容範囲も広がったりする。そういったことが原因で、店頭に並んでいる服がみんな可愛く見えるようになったのだろうと思っていたのだ。 ……まさか流行していたとは。
◆2 呼称を考える 森ガール――。 いくらなんでも、アラフォーがそんな格好をしているのは恥ずかしい。いや、違うぞ。こんな呼び名さえなければ恥ずかしくない気がする。「フェミニンとカントリーを足して2で割ったような格好が好き」これなら特に恥ずかしさは覚えない。 やはり「ガール」がまずいのか。ならば、他の語に置き換えればいいのだろうか。 森レディ。だめだ。生保レディのようだ。森生命勤務の女性を連想させる。 森ウーマン。だめだ。女子プロレスラーのようだ。オランウータンと字面が似ているせいだろうか。それとも、山崎邦正と対決するモリマンを連想させるせいだろうか。 森婦人。だめだ。ただの「森さんの奥様」だ。
ここに来てようやく気付く。「フェミニンとカントリーを足して2で割ったような格好をした人」これでいいではないか。そもそも、そういうことなんだから。 よし、一件落着。
◆3 森ガールのちょっとした秘密 森ガール――。 森ガールに象徴とも言うべきマキシ丈スカート。これの着用により、身体的に秘密が生まれているようである。
先日、とあるショップでスカートを見ていたときのこと。金髪で唇にピアスをした、どう見ても森にいそうもない店員さんが寄ってきた。しかし、店員さんの格好は森ガールであった。
店員「それ、可愛いですよねー」 ながた「そうですねえ」 店員「これだけ丈があるから、足も隠せちゃうんですよねー」 ながた「ああ、まあそうですね」 店員「毛の処理してなくても平気なんですよー。楽ですよー。あはは」
いきなりそんなことをカミングアウトしてくださってありがとう。 森ガールは毛の処理をしていない(場合もある)。スカートの下には、森のように毛が生い茂った足が隠されているのかもしれない。そうであってこそ、本物の森ガールなのか。
4 流行と、祭りの後の空しさと。 森ガール――。 この流行はいつおさまるのだろう。森ガールに限らずなんでもそうなのだが、流行などと関係なく、元々それが々好きだった人間がいるとしよう。流行には全く興味が無かったのに、流行には全く興味のない生き方をしているのに、好きだったものが流行してしまったため、いきなり「流行りの格好をしている人」になってしまう。 流行はいつかは終わる。元々好きだった人間にとっては、終わろうが終わるまいが関係なくその格好をし続ける。すると、今度は「以前流行った格好をしている人」になってしまう。 自分の立っていた場所で突然祭りが開催され、「参加してるつもりはないんです」と言ったところで、そこに立っていることに変わりはない。困惑しているうちに祭りが終わり、周りには誰もいなくなる。最初と同じ状態に戻るだけなのだが、会場となった土地にはなんだか寂しさがつきまとう。
この流行が早く収まって欲しいと願う。流行すると、その手のものが量産されるし安価になる。でもそんなことどうだっていい。安く買えなくてもいいし、見つけにくくてもいい。自分が好きなものが流行しませんように――。そんなことを願ってしまう、フェミニンとカントリーを足して2で割ったような格好が好きな私だ。(了)
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