非常食

 先日飲食店で見つけたもの。
「地球にやさしいつまようじ」
 ふむ……どういうことだろう。

非常食 

裏を見て、なるほど。
「でんぷん100% スマイルようじ」非常食2

中身。先端がかなり鋭い。あまり優しさは感じない。地球に優しくても、人の口(歯ぐき)には危険そうだ。
非常食3

 でんぷんと言うからには食べられるのだろう。つまようじと言うからいは、腐らないのだろう。だとすれば、これは非常食になり得るのではないか。

 子どもの頃、母親が作ってくれたお手玉。手作りお手玉の中身は小豆が一般的かと思うが、うちはなぜかお米を使っていた。
「その方が持ちやすい・受け取りやすい」というのと「食料難が来たら食べられる」という二つの理由を聞かされていた。小豆でも食べられると思うが、米は主食だからという意味だったのだろうか。
 そのお手玉は、捨てたのか誰かにあげたのか……記憶に全くないのだが、ともかく、今は私の手元にはない。結局、中身を食べる機会はなかった。

 その昔「明日、食べるものがない」というくらいの貧乏も経験しているのだが、お手玉の縫い目を切ることを思いつかなかったのか、そこまで落ちぶれてないという意識だったのか、これまた全く記憶にない。
 ひょっとして、食べたから手元にないとか? 食べた記憶は全くないけれど、ただ忘れているだけだったりして? いやいや、食べてないと思う。

 今、それがあったら、中身の米の古米っぷりは見事なものだ。何年ものだろう。37年ものくらいじゃないかしら。食べられないわけじゃないとは思うけど、食べるのはかなり勇気がいりそうだ。まだ、カエルの唐揚とかの方がすんなり口に入れられる気がする。

 でんぷんつまようじ。お米のお手玉。こんな風に、色んなところに食べ物を忍ばせておくのも、いざというときに役立つものかもしれない。結局、食べるか否かは……謎だけどね。(了)