金平糖の角

 車を車検に出した。
 訪れてからはじめて分かったのだか、色んな小憎いサービスをしている車屋さんだった。例えば、地域情報のフリーペーパーを発行。すごい。そんな車屋、聞いたコトがない。

 小憎いサービスのひとつとして、金平糖をくださった。薬のような小袋に入っていた。袋には金平糖の由来が書かれている。

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「ポルトガル語のコンフェイストから転じたもので、徳川時代の幕府へ献納する金平糖は36本の角がある物に限られていたと言われます 金平糖は疲労回復に良いです。」

 由来、と銘打っておきながら、最後にいきなり由来でもなんでもないのに「金平糖は疲労回復に良いです」と言い切る唐突さには驚かされたが、それはさておき、これは勉強になった。

 金平糖のブツブツは「角」だったのか。
 36本の角を持つのが由緒ある金平糖の証なのか。
「本」というより「個」という単位の形状をしていると思うが「角」である限り「本」が正しいのだろう。ひょっとしたら、その時代の金平糖はもっとツノツノしていたのかもしれない。

 ともあれ、ここはいただいた金平糖の角を数えないわけにはいかない。それが、どこか自信たっぷりに見える、眼前の金平糖に対する礼儀というものだ。礼を欠いてはならぬ。
私は油性ペンでマーキングしながら、それの数を数えていった。

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 結果、多分36本。
 多分、というのは、非常に微妙なのだ。明らかに隣の角とくっついていると分かるものもあったので、それは「2」とカウントした。一通り数えた時点では34だったのだが、よくよく見ると「これは2本分じゃなくて3本くっついているのか?」と思える角もあったのだ。だから、多分36本。
そう結論付けることで、なんとなくホッとした。

 真剣に数えてすっかり疲れたので、金平糖を口に放り込んだ。きっとすぐ疲労回復するに違いない。(了)