言葉というものは、使い方ひとつで色々な想像をかきたててくれる。 ニュースなどで流れると、つい気になってしまう言葉のひとつにこういうものがある。 「塾の講師が生徒に淫らな行為を……」 淫らな行為。一体どんな淫らなことをしたのだろうと、余計なことを考えてしまうのだ。
淫らって、かなりいやらしい。 だって、普通の性行為(?)って「淫ら」の範疇に入らないと思うんだもの。何をしたのかスパッと言ってくれるとスッキリするのだが、そうもいかないのは分かっている。 淫ら……どどど、どんなことしたの? ドキドキがとまんない。
この手の言葉は色々ある。 例えば「乱れる」。服装が乱れる。髪が乱れる。風紀が乱れる。大辞林で「乱れる」を調べると、 (1)整っていたものがばらばらになる。乱雑になる。 (2)通常の状態でなくなる。 (3)秩序がくずれる。混乱する。 (4)入りまじる。 の意味が出てくるが、いずれもざっくり言えば「くちゃくちゃになる」ということだ。そして、それらは「正す」ことができるものばかり。 「乱れた」程度のものは、元に戻せるのだ。
そこで気になる使い方が「言葉が乱れる」というもの。言葉が正しい使い方をされなくなったり、単語が本来とは違う意味で使われるようになったりということを指すのだろうが、どうもこれが私にはしっくりこない。
言葉は生き物なので、使われていくうちにどんどん変化していく。誤った言葉の使い方をしている人に対して「違ってますよ」と指摘したとしても(そんなイヤラシイことはしないが)大多数の人が使っているのなら、いずれそちらが正解となってしまう。
言葉は乱れているのではない。「言葉の乱れ」などとおかしな言い方をせずに、素直にそのまま「言葉の誤用」でいいのではないか。 「言葉が乱れる」――これで私がイメージしてしまうのは こんな感じの言葉だ。 「今日朝ごはん食べらあわられれたこす」 「仕事がいそがしくららららふむ」 「そうなのししるえのよねー」 こういうのが乱れているというのではないかと。 もしくは、淫らな行為をしているときに発するような言葉が 乱れているのではないかと。
ついでに「淫ら」も辞書で引いてみた。すると。 みだら 【▼淫ら/▼猥ら】 〔「乱れる」「乱り」と同源〕(男女の関係が)性的に乱れていること。ふしだらである・こと(さま)。
なんと! 「淫ら」は「乱れ」が語源だったのだ。この二つの語から沸く印象が酷似していることに、ようやく納得がいった。
淫らな行為と言葉の乱れ。色々考えていたら思考が乱れて文も乱れてきたのだが、なんとなくスッキリした。しかし、淫らな行為がどんな行為なのかはっきりするまでは、私の妄想はまだまだ乱れるのである。(了)
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