プレゼント――贈るときも頂くときも、とても嬉しいものである。贈り物をしようとするとき、プレゼントする相手のことを考える。喜ぶ顔が目に浮かぶ。それだけで嬉しくなる。自分もプレゼントをもらったような気分になる。 頂いたときも同じで、贈り主が色々考えて選んでくれたのだろうなあと、品物の後ろに隠れている思いも同時に受け取り、幸せな気分になる。 だが、困惑するのは贈り主不明のプレゼントである。
20代前半だったと思う。 ある日、家のポストに花柄の小さな袋が入っていた。メモ書きも何もついていない。中を確認するとオニキスの小さなピアスだった。 ピアスをする人間は家には私しかいない。私宛であると考えていいだろう。しかし、贈り主の名前がなかった。 そんな時、一番に思い浮かぶのは恋人の顔であろう。 ――誕生日でも何の記念日でもないけれど、プレゼントしてくれたんだ。さりげなくポストへなんてキザなことを……。 そう思うのは私だけではあるまい。
私は早速、当時交際していた彼に電話した。 「ありがとう。いつ来てくれたの? 全然気が付かなかった」 でも彼の返事は「え?」だった。 私は(またまたすっとぼけちゃって)と思いつつ、 「ピアスありがとう」 と言葉を続けた。するとしばしの沈黙が流れたあと、彼はこう言った。 「よくおモテになることで、よかったっすね」 謎の贈り主はその後、幼馴染のM(女性)であることが判明したが、まったく人騒がせな事件であった。
贈り主の名が記されていないプレゼントの決定版といえば、サンタクロースからのクリスマスプレゼントだろう。あいにく私は本物のサンタからプレゼントをもらった経験はない。 だが、この世にはサンタクロースが溢れている。毎日色んなサンタが色んなプレゼントをしてくれる。 温かいメールをくれるサンタさん。 食べ物のおすそ分けをしてくれるサンタさん。 「こんにちは」と笑顔をくれるサンタさん。 数え上げればきりがない。全ての方がサンタクロースに見えてくる。サンタより素敵なサンタ達である。
クリスチャンでなくとも、クリスマスはちょっと特別な気分になる日。 今年は結構「いい子」だったと自己評価している。今年こそ我が家に本物のサンタが来てくれるのではないだろうか。 そう思って手紙をしたためてみた。
サンタクロースさまへ 今年1年、私はいい子でした。イタズラも悪さもしていません。プレゼントはノートパソコンかデジタルカメラがいいです。 よろしくお願いいたします。 |
なんという浅ましい内容だ。純粋さのない人間の所にサンタさんが来てくれるわけがないではないか。 私は差出人の名を書かずに、それをゴミ箱に投函したのだった。(了) |