宇津井健

 今日、電車で、宇津井健にそっくりな人を見かけた。私の頭には、知る人ぞ知るマニアックな回文が浮かぶ。

 「宇津井健氏は神経痛」(うついけんしはしんけいつう)

 どうしよう。 笑いがこみ上げてくる。
 だめだ、意識をそらすのだ、と思うと、 余計にその一文が頭の中をぐるぐると回る。

 うついけんしはしんけいつう
 うついけんしはしんけいつう
 うついけんしはしんけいつう ほい
 うついけんしはしんけいつう

 なぜか、途中で「ほい」という合いの手まで入ってくる始末だ。
 だれか助けて~!!

 そっくりさんは、本物と同様、汗かきのようだった。 額ににじんでいる汗を拭くのだが……、 その汗を拭くのはハンカチではなかった。 手でもなかった。 開いた文庫本で拭いているのだ。
 最初、何をしているのだろうと思ったが、 しきりに繰り返すその動作を見ているうちに、 汗を拭いているのだと分かった。ネタっぽいけど、ホントの話だ。

 汗かき。
 あせかき……。
 きかせあ……。 

 おおっと? 
 これは簡単に回文にできるワードだぞ。

 「オレ汗かき、貸せ、あれを」 (おれあせかきかせあれお)
 この程度なら一瞬で作れる。
 天才だねえ。

 そんなわけで、そのあとしばらく頭の中で回文づくりを楽しんでいた。気付くと宇津井健はいなかった。
 あれ、いつ降りたんだろう?
  そう思うと、また意識は宇津井健に引き戻され、

 うついけんしはしんけいつう
 うついけんしはしんけいつう
 うついけんしはしんけいつう ほい
 うついけんしはしんけいつう

 の合唱が頭の中で再開されるのであった。 たっ、たすけてくり~!(了)

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